国立天文台によると、2025年の夏至は【6月21日(土)】。
この記事では、夏至にちなんだ食べ物のほか、夏至や冬至とはどんな日なのかを図や写真付きで説明。
加えて、夏至が太陽の位置を元に決められることにちなみ、太陽にまつわるスピリチュアルスポットも紹介します。
そもそも夏至/冬至とは?

北極圏では一日中太陽が沈むことなく、いわゆる白夜と呼ばれる状態になります
夏至は二十四節気の一つで、太陽が公道上で一番北にある夏至点を通過する日です。
太陽と赤道がもっとも遠くなるため、日本を含む北半球では一年で一番昼の時間が長くなります。
二十四節気とは、日本で古くから使われていた伝統的な太陰太陽暦のこと。
季節や天候の指標として使われてきたもので、「春分」「秋分」「冬至」なども二十四節気です。
夏至と反対に、一年で一番昼の時間が短くなるのが冬至。
夏至と冬至で太陽が出ている時間を比べると、その差は4時間50分にもなります。
大阪市北区で毎年6月に催される「茶屋町キャンドルナイト」
夏至の夜には、世界中で「キャンドルナイト」と呼ばれるイベントも実施されます。
電気を消し、ろうそくの灯りだけで夜を過ごすイベント。
いつもと違う、ゆったりとした時間を過ごせるだけでなく、節電にもつながります。
カナダで2001年に始まり、日本を含め世界中で行われるようになりました。
昔の日本では、夏至は田植えをする目安になっていました。
田植え神事のイメージ
夏至を過ぎても田植えが終わっていなければ、収穫量が少なくなると考えられていた地方もあります。
また、夏至と田植えが結びついた行事もあり、近津神社(茨城県大子町)で行われる御田植祭りが有名です。
参拝者は五穀豊穣や家内安全を祈願し、お祭りでもらった苗を自分の田に植えると豊作になるといわれています。
現代にも夏至にちなんだ行事や郷土色が残っているのは、それだけ日本人にとって夏至が重要な日だったからでしょう。
夏至にちなんだ食べもの
夏至の時期によく食べる物と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
実は地方によって、夏至の時期によく食べるものには違いがあります。
ここからは、日本各地でどのような物がよく食べられているのか紹介していきます。
・焼き餅
・うどん
・冬瓜
・タコ
・半夏生餅
・イチジク田楽
・うどん
・焼きサバ
なじみ深い食べものもあれば、意外に感じる食べものもあるかもしれません。
栄養価の高い食べものも含まれているので、疲れを感じている方はぜひ食べてみてくださいね。
焼き餅|五穀豊穣を祈願したお供えもの

新小麦を使って作るのが特徴。同量の小麦ともち米を混ぜた食べものです
関東地方には、神前に焼き餅をお供えして食べる風習が残っています。
半夏生は田植えが終わる時期であり、当時の人にとってはその年の米の収穫量が大きな関心事でした。
たくさん収穫できますようにと、五穀豊穣を願いを込めて焼き餅を神様にお供えしていました。
うどん|香川県は餅ではなくうどんで労る

のどごしの良い讃岐うどんは夏場でも美味しくいただけます
香川県の有名な食べものといえば、うどん。
半夏生の日に収穫したばかりの新麦で作ったうどんを振る舞って労う、という風習もあるほど、香川県とうどんの結びつきは強いものです。
1980年には、本場さぬきうどん共同組合が7月2日を「うどんの日」と定めました。
これは、半夏生が毎年7月2日前後にあたるためです。
うどんの日には「献麺式」が行われ、小麦が収穫できたことへの感謝と、「さぬきうどん」の発展を祈願し、さぬきうどんやうどんの材料が奉納されます。
冬瓜|熱中症対策にも効果あり

原産地は熱帯や亜熱帯地方で、日本でも南九州や沖縄での栽培が盛んです
名前に「冬」がつくため、夏の食べものと聞くと意外に感じるかもしれません。
実は冬瓜の旬は夏。
水分やカリウム、ビタミンCを多く含んでいるため、熱中症や夏バテ対策にも効果的。
そのため、夏の暑さの本番を迎える夏至の食べものになったと考えられています。
タコ|ぴったり吸い付く足にあやかったお供えもの

タコには疲労回復に効果のあるタウリンが含まれています。半夏生の時期にタコを食べるのは、夏バテ予防の目的もあったと考えられます
関西では、半夏生(はんげしょう)の食べものとして、タコを食べる風習があります。
半夏生とは夏至から数えて11日目ころの時期で、昔の日本人が季節の移り変わりを掴む目安として用いた暦「雑節」の一つ。
「彼岸」「入梅」「土用」も雑節です。
二十四節気と同じく、太陽の位置を元にして決められるため年によって日付が異なります。
ちなみに、2025年の半夏生は7月1日(火)です。
半夏生にタコを食べるのは、タコの足が吸盤で吸い付く様子にあやかって「苗がしっかり根を張りますように」と願いを込めて神様にお供えをしたからだといわれています。
半夏生は田植えが終わる時期なので、食べものをお供えして植えたばかりの苗の成長を祈ったのでしょう。
半夏生餅|室町時代から続く郷土食

室町時代ころから作られていたとされる半夏生餅は、焼き餅と同様、五穀豊穣を願って神様にお供えしました(写真出典:農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」)
主に奈良県で半夏生の時期に食べる風習が残っている食べもので、「さなぶり餅」とも呼ばれます。
小麦ともち米を混ぜて作るのは関東地方の焼き餅と同じですが、半夏生餅はきな粉をまぶして食べるのが特徴。
好みで黒蜜をかける人もいるそうです。
イチジク田楽|生産地ならではの食べ方

イチジクの生産量が日本トップクラスである、愛知県ならではの食べ方といえそうです(写真提供:Instagram Y・Nabさん)
愛知の一部に残っている郷土色で、半分に切ったイチジクの上から田楽味噌をかけて焼いた食べものです。
夏のイチジクは傷みやすく、流通が難しいため生産地周辺での消費が中心になるのだそう。
イチジクは「不老長寿の果物」と呼ばれた食べ物でもあり、昔は薬としても使われていました。
また、田楽味噌の「田楽」は豊作を祈願する踊りが由来。
このことから、イチジク田楽を食べることには「無病息災」や「豊作」を祈願する意味があります。
焼きサバ|特別な日に食べられる丸ごとのサバ

福井県の夏は盆地特有の蒸し暑さがあり、夏を乗り切るためのスタミナ源でもあったようです
福井県では、半夏生に焼きサバを食べる風習があります。
始まりは江戸時代といわれ、藩主が半夏生の食べものとして推奨したのだそう。
半夏生は農作業で疲れた農民が多く、体を労るための食べものとして脂ののったサバはぴったり。
当時は海の魚を食べられるのは病人くらいだったため、丸ごと焼いたサバを食べられる半夏生は特別な日とされていました。
夏至にちなんだパワースポット5選
夏至に関係するのは食べものだけではありません。
日本各地にあるパワースポットの中には、夏至に関係する場所もあります。
・岐阜の金山巨石群
・和歌山の雑賀崎灯台の夕焼け
・岡山の吉備津彦神社
・香川の夏至観音
・沖縄のウティダ石
名前に夏至と付いているところもありますが、一見して由来がわからないスポットもありますよね。
詳しく紹介します。
岐阜の金山巨石群|謎多き5000年前のテクノロジー

金山巨石群では観測会が行われていて、石の隙間から差し込む太陽光や、日の出・日没の瞬間に見られる太陽光などを観測できます
岐阜県下呂市にある金山巨石群は、3カ所の巨石群の総称です。
大きな石は5,000年前に現在の場所に運ばれてきたとされ、太陽カレンダーの機能をもつことがわかっています。
その機能性は現代人の想像を遙かに超えるレベル。
石の表面に刻まれた傷から、夏至などを見極めていたと考えられています。
【金山巨石群の基本情報】
●住所:岐阜県下呂市金山町岩瀬高平
●公式サイト:金山巨石群
和歌山の雑賀崎灯台の夕焼け|有名なフォトスポット

景勝地「和歌の浦」に沈む夕日。ぜひ自分の目で見てみたいものです
和歌山県にある雑賀崎灯台は、美しい夕焼けの名所として知られます。
2019年には、紀伊水道に沈む夕陽を鑑賞できる観光スポットとして「雑賀崎灯台展望広場」がオープンしました。
展望広場にはハート形の目印が。
これは春分・秋分、夏至、冬至を表わしていて、四季ごとに夕陽が沈む位置が一目で分かるようになっています。
夕陽が目印を照らすと、ハートの影が映し出される仕掛けもあるのだそう。
フォトスポットとしても注目されています。
【雑賀崎灯台の基本情報】
●住所:和歌山県和歌山市雑賀崎字鷹巣山809-2
●公式サイト:雑賀崎灯台
岡山の吉備津彦神社|神様が降り立つパワースポット

吉備津彦神社がある場所は、昔から神の山として人々から崇拝されてきた場所。神が降りる場所とされ、パワースポットとしても有名です
岡山県にある吉備津彦神社は、夏至の日に太陽が正面にくるよう建てられています。
日の出を迎えると、太陽の光が正面鳥居から昇り神殿の御鏡に入ることから「朝日の宮」との呼び名も。
また、夏至の日には太陽(日の神)に感謝する式典も行われます。
【吉備津彦神社の基本情報】
●住所:岡山県岡山市北区一宮1043
●公式サイト:吉備津彦神社
香川の夏至観音|美しくも不思議な観音像

頭を少し右に傾け、錫杖を手に佇んでいる光の観音様(写真提供:Instagram Ryojiさん)
夏至観音は、神奈川県小豆島にある洞雲山に、夏至の時期にだけ現れる光の観音像です。
数十年前、洞雲山を撮った写真から偶然発見されました。
陽光が洞窟へ差し込む際に、周囲の岸壁などが影になり、観音像が岩肌に浮かび上がる自然現象です。
そのため、見られるのは晴天の15:00過ぎのわずか数分だけ。
しかも、夏至をはさんだ約50日間しか見られません。
神秘的で美しい姿を一目見たいと、毎年多くのお遍路さんやカメラマンが訪れます。
【洞雲山の基本情報】
●住所:香川県小豆郡小豆島町坂手灘上甲730 小豆島霊場1番札所 洞雲山
●期間:6月中旬~7月初旬(例年)
●公式サイト:洞雲山
沖縄のウティダ石|かつての文化を今に伝える貴重な石

16世紀ころ、堂之比屋という人が用いたといわれていて、この石によりかかって夏至から冬至までの日の出を観察したのだとか(写真:PhotoAC)
沖縄県久米島にあるウティダ石は、「太陽石」とも呼ばれる石時計です。
かつて日の出を観測した石だと伝えられています。
石の表面には沖合にある島々を目安とした線が刻まれており、日の出の方角で季節をとらえて農作業などに役立てられました。
かつての文化を知る貴重な資料として現在に伝わっています。
【ウティダ石の基本情報】
●住所:沖縄県島尻郡久米島町比屋定11
夏至に行いたいセルフメンタルケア
昔の日本では、夏至の前後は田植えで忙しい時期でした。
夏至の時期に食べる風習があるものも、栄養価の高い食材が多く、疲れた体を労ろうとしていたのが伺えます。
今とは生活習慣が異なりますが、季節の変わり目である夏至は現代人にとっても疲れが溜まりやすいもの。
リラックスやデトックスを意識して、体とともに心も労ってみてはいかがでしょうか。
「ちょっといい」を日常に取り入れる

毎日使うからこそ「ちょっといい物」を
今は日常的に使う道具が安く手に入る時代。
だからこそ、あえて「ちょっといい」道具を日常に取り入れると、豊かな気持ちになります。
掃除機ではなく、あえて箒を使って掃除をする。
美しい伝統工芸のグラスを使って飲み物を飲む。
そんな丁寧な暮らしを通して、自分の気持ちに向かい合う時間を作ってみましょう。
芸術鑑賞で心に栄養を

心穏やかな時間を過ごして
慌ただしい毎日を過ごしている方は、あえて立ち止まる時間を作るのも大切です。
静かに過ごせる美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
じっくりと一枚の絵と向き合う時間は、自分自身を見つめ直す時間にもなるかもしれません。
絵画以外にも現代アートや建築など、興味のあるジャンルから選んでみてください。
お出かけでリフレッシュ

非日常を求めて
思い切って日常生活から離れて、リフレッシュしてみませんか?
遠くへ行かなくても、緑が豊かな場所に行ったり、日帰り旅行に出かけたりするだけで、非日常を味わえます。
電車に揺られてぼんやり風景を眺める時間も、ちょっと疲れた気持ちをほぐしてくれますよ。
2025年の夏至に備えよう
夏至にちなんだ食べものは栄養価が高いものが多いので、疲れを感じている方におすすめです。
いつもの食卓に旬の食べものを取り入れることで、季節の風情を感じることもできるでしょう。
気持ちが疲れているときは、パワースポットを訪れて力を分けてもらうのもいいですね。
元気に暑い夏を迎えられるよう、しっかりエネルギーを蓄えましょう。
Text:小林あきこ / Sakura Takahashi
参考文献:『絵でつづるやさしい暮らし歳時記』(新谷尚紀監修/日本文芸社)、『知っておきたい日本の年中行事事典』(福田アジオ、菊池健策、山崎祐子、常光徹、福原敏男著/吉川弘文館)、『日本の365日を愛おしむ−毎日が輝く生活暦−』(本間美加子著/東邦出版)