「掘れば湯が出る」といわれるほど、温泉が豊富な鹿児島県。全国的に有名な「霧島温泉」と「指宿温泉」も、鹿児島が誇る温泉のほんの一部にすぎません。他にも個性豊かな温泉が県内いたるところから湧き出していて、一年を通し大勢の温泉ファンを楽しませてくれます。
多彩な温泉地が県内に点在している鹿児島ですが、今回はその中でも、とっておきの2つの温泉地「湯之元温泉」と「くしき野白浜温泉」をピックアップ。いずれも、若手のパワーやアイデアを原動力に「まちおこし」や「世代間交流」に取り組む温泉地です。
あらゆる場所から「温泉」が湧く鹿児島
鹿児島は、全国でも特に温泉ファンが多い土地だといわれます。県民のなかには、車の中に「温泉セット」を常備しているツワモノも少なくないとか…。県内各地で温泉が湧いているので、ちょっとドライブついでに温泉に入る、という楽しみ方もできるのが鹿児島の魅力でしょう。
ちなみに鹿児島では、市街地のど真ん中にある「銭湯」も天然温泉。ユニークなところでは、熱々の砂に埋まる砂蒸し温泉(指宿温泉)や、波打ち際の岩場をくり抜いたような湯船に浸かれる温泉(薩摩硫黄島/東温泉)などがあります。
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鹿児島は温泉王国
「温泉王国」鹿児島は「火山の国」
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噴煙を上げる桜島
鹿児島にこれほど温泉が多いのは、鹿児島が火山地帯だから。
錦江湾(鹿児島湾)に浮かぶ桜島や霧島山の新燃岳は活発な火山として全国的に有名ですし、大昔の火山活動の名残、たとえば火口跡にできた丸い池なども各地に点在しています。そもそも錦江湾自体、「姶良カルデラ」という約29,000年前に起きた巨大噴火の名残です。
源泉の数は2,753カ所!
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地下深くから湧き出す源泉
鹿児島県内にある源泉の数は2,753カ所。これは大分県に次ぐ全国第2位の数字です。1分あたりの湧出量は約158,000Lで、こちらは全国第3位。どちらも「温泉王国・鹿児島」の名に恥じない数字といえます。
古くから愛されてきた鹿児島の「温泉」
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坂本龍馬も訪れた塩浸温泉
鹿児島の温泉には古い歴史を持つものもたくさんあります。たとえば霧島にある「塩浸温泉」は、幕末の英雄・坂本龍馬が新婚旅行で訪れた場所として有名。
今回紹介する「湯之元温泉」も約400年前に整備され、江戸時代は薩摩藩の御前湯として藩主(島津家)一族の湯治にも使われてきた由緒ある温泉地です。
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世代を超え愛されている温泉
時代や世代を超えて愛され続けているのが、鹿児島の温泉の魅力のひとつ。地元のお年寄りと若い旅行者が肩を並べて湯に浸かり、世間話に花を咲かせる様子も珍しくありません。
温泉地の物語① 約400年の歴史を誇る「湯之元温泉」
最初に紹介する「湯之元温泉」は、鹿児島県日置市にある温泉街です。1640年ごろに整備されたといわれ、江戸時代には藩主一族が使う「御前湯」、一般民衆用の「打込湯」など、24の温泉が集まる薩摩藩直轄の温泉地として栄えました。無色透明のお湯は、主に皮膚病や胃腸、神経痛、婦人病などに効果が期待できます。
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約400年の歴史を持つ「元湯・打込湯」
湯之元温泉には、今でも十数カ所の温泉(温泉宿や立ち寄り湯など)があります。その中で特に歴史を感じさせるのは「元湯・打込湯」という温泉。
かつて御前湯があった場所に立ち、2つ並んだ浴槽の一方には御前湯の源泉から引いた湯(元湯)、もう一方には打込湯の源泉から引いた湯が入っています。どちらも泉質は同じ「硫黄泉」ですが、含まれる成分の関係により、効能はそれぞれ違うとのこと。
湯之元温泉がある「湯之元駅」までは、鹿児島中央駅から各駅電車で30分程度。「鹿児島市から電車で日帰りできる貴重な温泉街」として訪日観光客にも大人気だそうです。
【元湯・打込湯 基本情報】
住所:鹿児島県日置市東市来町湯田2231
電話:099-274-0326
営業時間:夏期 6:00〜21:30 / 冬期 6:30〜21:30
定休日:4月1日、9月1日
料金:150円(小学生まで無料)
世代を超えて地域を盛り上げる「湯之元未来80人会議」
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地域活性化に取り組む「湯之元未来80人会議」の永山さん
湯之元温泉の最大の特徴は、地域を盛り上げるため地元の有志が活発に活動していること。老若男女で構成される「湯之元未来80人会議」や、その中の若手グループ「ゆのらぼ」といった団体が、地域マップの作成や「温泉神社」の整備、温泉イベントの運営をし、湯之元温泉を盛り上げているんです。
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温泉神社の鳥居
メンバーの永山由高さんによると、湯之元温泉の魅力は「若手とベテランが互いに協力していること」だそう。実際に街中を歩いてみると、温泉や食事処、和菓子屋、コンビニ、電気屋といった地域商店の店主や経営者にも若手が多く、みんなで一緒に「お互いやまちのことを考えている」という印象です。
ここからは、そんな魅力的な店舗のうち、旅行者にもぜひおすすめしたいスポットをいくつか紹介します。
湯之元温泉のおすすめスポット「めぐみの湯 錦龍館」
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めぐみの湯 錦龍館
湯之元駅から徒歩5分の「めぐみの湯 錦龍館」。最近リニューアルされたため、設備も使い勝手が良く広々としています。定番の大浴場や露天風呂はもちろん、時間貸しの「家族湯」もあるので少人数のグループや家族連れにもおすすめ!
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錦龍館の露天風呂
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錦龍館の家族風呂
【めぐみの湯 錦龍館 基本情報】
住所:鹿児島県日置市東市来町湯田3355
電話:099-274-2311
営業時間:9:00〜23:00
定休日:金曜
料金:大人 420円 / 子ども 150円(家族湯は1時間まで2,500円、延長は30分1,000円)
湯之元温泉のおすすめスポット「湯之元せんべい 梅月堂」
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湯之元せんべい 梅月堂
大正10年(1921年)創業の「湯之元せんべい 梅月堂」。山椒の葉を乗せた「湯之元せんべい」からオリジナルの「ぬれどら焼き」、自家製ラムレーズンを使った「ラムドラ」まで、伝統的な鹿児島銘菓や新感覚のスイーツがそろっています。「ぬれどら焼き」には季節限定バージョンもあるので、リピーターにもおすすめです。
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鹿児島の伝統銘菓「湯之元せんべい」
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ユニークな「ぬれどら焼き」と「ラムドラ」
湯之元温泉のおすすめスポット「四季折々ゆのはな」
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四季折々ゆのはな
気軽なランチから本格懐石料理までいただける料理店「四季折々ゆのはな」。
隠れ家的な雰囲気の落ち着いた店内で、地元の旬の食材による絶品和食が楽しめます。湯之元駅から徒歩10分弱の場所にあるので、夕食を食べてから電車で鹿児島市に戻る…なんてことも可能。ランチは2週間ごとに内容が変わるそうで、リピーターにもおすすめ。
湯之元温泉のおすすめスポット「Yショップはりまや」
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Yショップはりまや
湯之元駅の正面にある「Yショップはりまや」。一見すると普通のコンビニのようですが、地域の方が作るボリュームたっぷりのお弁当や地元の野菜、手作り大福やお団子などが並ぶ「地域商店」でもあります。お土産用の「湯之元せんべい」も買えるので、帰りの電車に乗る前に立ち寄ってみては?
温泉地の物語② 老若男女に親しまれる「くしき野白浜温泉」
次に紹介するのは、東シナ海を見下ろす高台にある「くしき野白浜温泉」。
1997年に開業した家族経営の温泉宿ですが、若い旅行者から地元のお年寄りまで幅広い年代層に愛されています。泉質は塩分濃度の高い塩化物泉で、きりきず、やけど、慢性皮膚病、慢性婦人病、神経痛、疲労回復などに効果が期待できます。
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アメリカンな佇まいの「くしき野白浜温泉」
おしゃれなコーヒースタンド、海に面したイベントスペースやバーベキュースペース、シックなゲストハウスなど、若い後継者によるユニークな取り組みにより、ひと味違う温泉スポットに。
ちなみに「くしき野白浜温泉」がある串木野市は、300年以上にわたり金や銀を生産してきた鉱山の町。くしき野白浜温泉のお湯も、金鉱脈の中を通って湧き出しているそうですよ。
「露天風呂と夕日」が魅力
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露天風呂の向こうに東シナ海が広がる
くしき野白浜温泉の魅力のひとつが露天風呂。眼の前には東シナ海の壮大な景色が広がっていて、天気の良い日なら、温泉に浸かりながら「沈む夕日」を眺めることも。もちろん昼間の青い海も開放感たっぷりです!
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天気の良い日は夕日を眺めながら…
温泉の営業時間は22時まで。日帰りするのもいいですが、夕日を眺めた後は宿泊施設でゆっくりするのもおすすめです。一人旅や少人数ならシンプルな和室、10名までのグループなら1日1組限定のゲストハウスが利用できます。
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少人数旅におすすめの和室
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最大10人まで泊まれるゲストハウス
【くしき野白浜温泉 基本情報】
住所:鹿児島県いちき串木野市羽島265-1
電話:0996-35-0031
営業時間:8:00〜22:00
定休日:第1木曜
料金:大人 420円 / 子ども 150円
センスが光る「若き後継者」のチャレンジ
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「跡継ぎ」として鹿児島に戻ってきた冨永さん
こちらは、くしき野白浜温泉を運営している冨永さん。
アメリカや東京で磨いたセンスを生かし、家族経営の温泉宿に新しい風を吹き込んでいます。ロビーの一角に作ったオシャレなコーヒースタンドも、最初は周囲に反対されたそうですが、今では若い旅行者だけでなく常連さんにも大人気。お風呂上がりに、コーヒー片手に談笑するお年寄りも多いのだとか。
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ロビーの一角にあるコーヒースタンド
冨永さんのセンスは、敷地内のあちこちに光ります。
例えば、海に面している庭は、人工芝やウッドデッキを敷いて南国リゾートのような雰囲気に。お風呂上がりに、コーヒーやビールを片手に海を眺める…なんて最高ですね。地域のお祭りもここで開催するそうで、まさに「地元の人と旅行者の交流の場」になっています。
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庭に設置されたウッドデッキ
敷地内にあるゲストハウスは、長期滞在する作業員向けの施設をリニューアルしたもの。冨永さんが大好きだという、アメリカンスタイルを意識したインテリアが引き立ちます。こんな温泉宿、なかなか出会えません。
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ゲストハウスのリビング
地元の野菜や郷土料理も!
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地元の「採れたて野菜」が並ぶ
地元で採れた新鮮や野菜や果物が並ぶロビー。ちょっとした物産館のような雰囲気で、ドライブついでに立ち寄る旅行者にもおすすめです。
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手作りの「つきあげ」
タイミングが合えば、揚げたての手作り「つけあげ」(さつま揚げ)も味わえます。フワフワな食感と旨みと甘みの詰まった味わいは、ここでしか味わえない絶品!ロビーの椅子に座って頬張れば、地元の人との会話が弾むかも。
東シナ海の【温泉】に行ってみよう!
県外での知名度はそれほど高くないものの、鹿児島の中では知る人ぞ知る、東シナ海沿いの温泉。
今回紹介した「湯之元温泉」と「くしき野白浜温泉」は、規模や歴史はまったく違うものの「温泉や地域を盛り上げたい!」という若いエネルギーにあふれていました。
温泉王国・鹿児島の奥深さを感じられる個性的な温泉に、ぜひ足を運んでみてください!