安房森林軌道 鹿児島県、屋久島の東部から中央部の間を走る「安房(あんぼう)森林軌道」。島で唯一、現役の森林鉄道です。 大正時代末期に完成し、屋久杉の運搬に使用されていた安房森林軌道。屋久杉が伐採されなくなった現在も、森林整備用に不定期で稼働しています。かつては安房港から大株歩道まで全長26㎞の架線を敷いていましたが、現在では荒川分岐点から苗畑間の12㎞の区間でのみ運行中です。 優れた品質の屋久杉を運び、島の発展に貢献した安房森林軌道ですが、現在は「縄文杉」までの登山道の一部に。手すりがない橋など注意が必要な場所も多い道中において、軌道の上は初心者にも歩きやすい道として活用されています。軌道脇には苔むす木々や小川が流れており、屋久島の神秘的な景色が一望可能。縄文杉近くまで軌道が徒歩2時間半以上続きますが、神秘的な環境で道中を楽しませてくれます。
枕状溶岩 鹿児島県、屋久島の東部に位置する「枕状溶岩(まくらじょうようがん)」。田代海岸に広がる岩礁です。 今から6,000年前、恐竜が繫栄していた白亜紀から存在するといわれる屋久島の地層。熊毛層群と称される太古の地質が枕状溶岩でも確認できます。枕状溶岩は、白亜紀に屋久島から遥か遠くで噴き出したマグマが海水で急冷されてできた溶岩。大陸プレートの移動と共に転がって屋久島の海岸にたどり着いたものと考えられています。 見どころは、「枕状」の名の通り、枕の断面ををいくつも並べたような岩の姿。角が取れて丸みを帯びた形が、いかに長い年月をかけて海洋を渡ってきたのかを物語っています。岩肌の赤茶の色もめったに見られない岩の姿で、噴火当時のマグマの姿が目に浮かぶようです。 枕状溶岩がある田代海岸は、ウミガメの産卵場所としても有名。シーズンが始まる5月下旬から6月にかけて、多くの観光客が訪れます。
小花之江河 鹿児島県、屋久島の中央部に位置する「小花之江河(こはなのえごう)」。日本最南端の高層湿原です。 淀川登山口から宮之浦岳への登山の途中、標高1,600mの場所にあります。高層湿原とは、泥のかさ増しで高層化によって地下水を吸い上げられないため、雨水のみで維持されています。小花之江河と同じく高層湿原である「花之江河」には、安房歩道や大株歩道など4つの登山道の分岐点があり、小花之江河はその通り道にある湿原です。花之江河に比べると面積は狭めですが、開けた場所からは高層湿原の特徴を一望できます。 太古から積み上がった泥が広がる小花之江河では、希少な動植物が生息しています。雨が多く養分が少ないため、長年の寒風に耐えられず立ち枯れる寸前の木「白骨樹」があることでも有名。緑深い屋久島の印象とは違い、高地ならではの涼しげな佇まいです。標高の高地域に生息する固有種「ヤクシカ」が見れることも。霧が立ち込める湿原のなかで見る白骨樹や動物たちがいる空間はなんとも幻想的です。
横河渓谷 鹿児島県の屋久島に位置する「横河渓谷(よっごけいこく)」。永田川上流の渓谷です。渓谷といえば山奥にあるイメージですが、横河渓谷は周辺に海が望める渓谷。屋久島の山は花崗岩(かこうがん)という地質で形成されており、横河渓谷にも花崗岩の岩場が広がっています。背丈より大きな巨大岩から滑る「天然のウォータースライダー」を楽しめますが、増水時には水の流れが早く危険な場所も。 一方で浅瀬の場所は水流がおだやか。屋久島の原生林の緑色と川面のエメラルドグリーンの対比が美しく映えます。「1カ月に35日降る」ともいわれるほど、雨が多い屋久島。日本の植物固有種の7割が自生する苔むす森が、しっとりと雨に包まれる様子は神秘的です。 横河渓谷の付近には永田岳への登山道の一部である遊歩道があり、水場を利用するための休憩スポットとしても利用されています。
縄文杉 鹿児島県の屋久島に位置する「縄文杉」。樹齢は4000~7000年とも推定される、日本一大きい屋久杉です。 「屋久杉」とは、屋久島に自生する標高500m以上、樹齢1000年以上の杉の木のこと。縄文杉は数ある屋久杉の中でも最古であり、別格の存在です。波を打ったような襞(ひだ)、動物がぶつかるなど損傷のあとに木自らが治癒させた印の、瘤(こぶ)が多いのが特徴。巨大な縄文杉を一目見ようと、多くの観光客が標高1300mに位置する縄文杉を目指し、往復10時間かけてを登山します。現在も厳重に保存管理されており、観光客は縄文杉から少し離れたデッキから見物するなどルールが決められています。 フェリーの玄関口でもある「宮之浦地区」「安房地区」には登山グッズのレンタルショップが点在。降水量が多い屋久島に備えた安全な登山装備、テントやバーナーのレンタルもあり、事前に予約しておくとスムーズに受け取りが可能です。
ウィルソン株 鹿児島県、屋久島の中央部に位置する「ウィルソン株」。屋久杉の中央部分が朽ちて、外側の部分だけ残った切株です。 1586年、大阪城築城のために伐採された跡であるといわれています。のちに株を調査したアメリカの植物学者・ウィルソン氏の名前が付けられました。株の大きさから、伐採された時点の樹齢は3,000年と推定され、木が生きていたら縄文杉よりも大きかったはずだといわれることも。苔むして大きな口を開けているような姿は、まるで森の精霊のように神秘的です。木の内部は、人が数人入れてしまう広さ。入って右側に座って見上げると、輪郭の一部がハート形に見える部分があり、ここから光がこぼれる風景は撮影スポットとして有名です。 周辺には、屋久島最大級の屋久杉「縄文杉」があります。縄文杉からウィルソン杉までの道のりは急坂が続く難所であるため、登山客の休憩スポットとしても親しまれている場所です。
宮之浦岳 鹿児島県、屋久島の中央部に位置する「宮之浦岳(みやのうらだけ)」。日本最南端の百名山です。1936m、九州一の標高を誇り、晴れの日には背景に種子島が望めます。「洋上アルプス」と称される屋久島の山脈に属し、対峙する永田岳なども含め、九州地方でも標高の高い山岳です。 樹齢1000年以上の屋久杉が何本も自生することでも知られる、自然豊かな宮之浦岳。頂上へ近づくにつれて、花崗岩質の奇岩の数々が見られます。雨で浸食されて自然に形成された奇石は、降雨量が多い屋久島ならではのもの。頂上付近は、木が生育できない標高である「森林限界」であるため、立ち枯れ寸前の白骨樹がそびえる姿に圧倒されます。 初心者も比較的に登りやすい淀川登山口コース、荒川登山口から縄文杉へアクセスするルートとセットで訪れるコースが人気。屋久島は降水量が多く、冬季は雪山になるためご注意を。